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中国向け国際物流・配送の基礎知識|日本企業が押さえるべき仕組みと越境EC活用の全体像【2026年版】
中国向け国際物流・配送の基礎知識|日本企業が押さえるべき仕組みと越境EC活用の全体像【2026年版】
POINT|この記事の結論
- 日本から中国への配送には大きく「①国際宅配便(直送)」「②保税倉庫経由の跨境電商モデル」「③一般貿易(輸出通関)」の3ルートがあり、目的と規模によって最適解が異なる
- 越境ECで小口・D2C販売をするなら「跨境電商」制度(9610・1210申告)の活用が関税・VAT面で有利。ただし対象品目はポジティブリストに限定されており、事前確認が必須
- 保税倉庫(保税区)を活用すると、ライブコマース配信中に「即日発送」演出が可能になり、CVRが大幅に改善する事例が増えている
- 国際物流コストはGMVを圧迫する固定費。物流設計を誤ると、KOLライブで売上を立てても利益が残らない構造になる
- 配送・通関の仕組みを理解した上で、担当者がライブコマース研修(助成金活用可)で販売・集客スキルも習得することが、越境EC事業を軌道に乗せる最短ルートだ
1. 中国向け国際物流の全体像:3つのルート
日本から中国に商品を届ける方法は一つではない。販売形態・商品の種類・月次出荷量によって、最適なルートは大きく変わる。まず3つのルートの特性を整理しておこう。
ルート①:国際宅配便(直送)
日本国内で商品をピックアップし、EMS・DHL・FedEx・UPS・ヤマトグローバルエクスプレスなどのキャリアが中国の消費者宅まで直接届けるモデル。個人間取引・小口B2C・越境EC初期フェーズで最も使われる。
主なキャリアの特徴
| キャリア | 目安配送日数(日本→中国主要都市) | 特徴 |
|---|---|---|
| EMS(日本郵便) | 4〜7営業日 | 料金が比較的安価。大型荷物は不向き |
| DHL Express | 2〜4営業日 | 速い・追跡精度高い。コスト高め |
| FedEx International Priority | 2〜3営業日 | 通関サポートが充実 |
| ヤマトグローバルエクスプレス | 3〜5営業日 | ヤマト便の延長線。中国の宅配ネットワークと接続 |
| 中国系フォワーダー経由 | 3〜6営業日 | コスト重視。品質はフォワーダーによる |
※配送日数・料金は出荷タイミング・荷物サイズ・目的地によって変動します。各社公式料金表を確認してください。
直送の注意点
- 1件ごとに中国側の通関が発生するため、ロット数が増えると通関コストが比例して膨らむ
- 消費者が関税を後払い(着払い関税)で求められるケースがあり、顧客体験が悪化することがある
- 返品時の物流コストが高く、返品率の高い商品カテゴリとは相性が悪い
ルート②:跨境電商モデル(保税倉庫経由)
中国政府が定める「跨境電子商務(クロスボーダーEC)」の特別通関制度を活用し、保税区内の倉庫に事前に在庫を搬入しておくモデル。消費者が注文した時点で保税区→自宅への出荷が行われる。
中国の保税区(自由貿易試験区・跨境電商総合試験区)は全国50ヶ所以上に設置されており、杭州・上海・広州・天津・鄭州・重慶などに代表的な拠点がある。
跨境電商申告の2つの方式
| 申告番号 | 通称 | 仕組み |
|---|---|---|
| 9610 | 直送モデル | 個別の注文ごとに申告。保税区不要。小口直送向け |
| 1210 | 保税モデル | 先に保税区に輸入→個別出荷時に2回目申告。倉庫型越境EC向け |
保税倉庫モデルの最大のメリット
消費者の体感では「中国国内発送」に近い速度で届く(保税区→自宅は通常翌日〜3日)。ライブコマース中に「今すぐ購入で48時間以内お届け!」という演出が成立し、即決率(CVR)が大幅に向上する。越境EC×ライブコマース連携の統合戦略でも、保税倉庫モデルとライブ連携の相乗効果を詳しく解説している。
ルート③:一般貿易(輸出通関)
通常の輸出申告を経て、中国側で輸入通関(一般货物)を行うモデル。法人間の大量取引・商社経由のB2B販売で使われる。
- 関税率は品目ごとにHSコードで決まる。日中間にはEPA(経済連携協定)はまだ存在しないため、MFN(最恵国)関税が適用される
- 増値税(VAT、現行13%または9%の品目別税率)が輸入時に課される
- 輸入者が中国国内の法人でなければならないため、直接日本からD2C販売するには不向き
日本の中小企業が越境ECを始める際に選ぶルートとしては、現実的には①か②(跨境電商制度)が多い。
2. 跨境電商制度の基礎:ポジティブリストと税制
跨境電商制度を使って中国に商品を送る場合、対象品目は中国政府が定める「跨境電子商務零售进口商品清单(ポジティブリスト)」に含まれている必要がある。
越境ECの対象品目ポジティブリスト解説で詳しく解説しているが、主なポイントは以下の通りだ。
- 日本製品で頻出の対象品目:化粧品・スキンケア、健康食品・サプリメント(食品安全法対象外のカテゴリ)、ベビー用品、家電、衣料品など
- リストに含まれない品目はこの制度を使えず、一般貿易での輸入申告が必要になる
- 化粧品は中国のNMPA(国家薬品監督管理局)への登録が別途必要なカテゴリもある。国内EC向けとは規制が異なるため事前確認が必要
個人枠と年間累計額の上限
跨境電商モデルでは、消費者個人の「年間購入限度額」と「1回の取引限度額」が設定されている(金額は法改正・政令改定により変更される可能性があるため、最新の中国税関ガイドラインを確認すること)。B2Cの越境EC前提でビジネスを設計する場合、この上限に引っかかると消費者の購入機会を損なうため、実務上のリスク項目として把握しておく必要がある。
税率の優遇
跨境電商制度内で定められた品目・金額内であれば、通常の輸入関税が免除または軽減され、増値税・消費税の70%を納付する優遇制度が適用される(越境ECの関税・税制の詳細解説参照)。これが「一般貿易より跨境電商のほうが消費者にとって安い」と言われる理由だ。
3. 保税倉庫の選び方と実務注意点
保税倉庫(跨境電商向け保税仓库)の選定は、越境ECの物流設計の根幹だ。以下の観点で比較検討する。
立地:主要保税区の特性
| 保税区 | 特徴 |
|---|---|
| 杭州跨境電商総合試験区 | 中国最初の総合試験区。政策成熟度が高く対応できる倉庫会社が多い |
| 上海自由貿易試験区 | 国際空路・海路の利便性が高い。輸入処理が速い |
| 広州南沙自由貿易区 | 珠三角(広東省)向け配送が速い。南方向けEC拠点として機能 |
| 天津自由貿易試験区 | 華北(北京周辺)向け配送が速い |
| 鄭州航空港区 | 内陸部への配送ハブ。コストが比較的安い |
倉庫会社の選定チェックリスト
- 日系対応可能か(日本語または英語での折衝が必要)
- 最低取扱量(最低出荷件数や最低保管料)
- 入庫から出荷完了までの平均リードタイム
- 温度管理対応(化粧品・食品は必要)
- 中国主要プラットフォーム(Tmall Global・抖音電商・京東全球购)との在庫API連携
ライブコマースと保税倉庫の連携
中国ライブコマース産業帯と在庫設計の実態でも解説しているように、ライブ配信中の「在庫残り〇個!」「本日中発送!」という演出が購買を後押しする最大の心理的トリガーになっている。
保税倉庫に在庫を持つことで、この演出が現実に成立する。日本から直送するモデルでは「お届けまで7〜14日」となり、即決率が下がる。配信開始後3〜6ヶ月のテスト期間で売上実績が見えてきたら、保税倉庫モデルへの移行を検討するのが現実的なロードマップだ。
4. 国際物流コストの構造と利益計算
越境EC事業において、物流コストは販売原価に次ぐ主要費用だ。コスト項目を正確に把握しないと、ライブで売上が立っても手元に利益が残らない状況になる。
主要コスト項目
| コスト項目 | 概要 |
|---|---|
| 国際輸送費(日本→保税区) | 重量・容積・キャリアによる。コンテナ・航空便・宅配便で大きく異なる |
| 保税区保管料 | 保管日数・パレット数に応じた月額費用 |
| 入庫・検品費用 | 一件あたりの作業費。商品種類が多いほど増加 |
| 個別ピッキング・出荷費 | 1出荷ごとの梱包・ラベル・発送手数料 |
| 通関手数料 | 輸入申告ごとの代行費用 |
| 跨境税(消費者負担分) | 購入者に課される軽減税(制度内であれば関税免除) |
| 返品処理費 | 返品率が高い商品カテゴリは見逃せない変動費 |
粗利計算の例(参考)
商品原価500円、販売価格(中国側)2,000円相当のケースで、国際輸送・保税倉庫・出荷・プラットフォーム手数料・KOL歩合を合計すると、原価比50〜70%がコストになるケースも珍しくない。事前の損益シミュレーションが必須だ。
5. 輸出規制と品目別の注意点
日本から中国への輸出には、日本側の輸出規制(外為法・輸出貿易管理令)と、中国側の輸入規制の両方を確認する必要がある。
日本側の輸出規制
- 食品:農薬残留基準・放射性物質検査証明が求められるケースがある(特に一部の食品カテゴリ)
- 化粧品:植物由来成分の検疫・CITES(ワシントン条約)対象原材料の確認
- 医薬品・医療機器:輸出許可が別途必要
- 安全保障上の懸念品目:外為法の規制対象に該当しないか事前確認
中国側の輸入規制
- 化粧品は中国NMPAへの届出または登録が必要(跨境電商向けは届出で可な品目も)
- 食品輸入者・輸出業者・生産企業の中国税関への事前登録が2022年以降義務化されている(GACC登録)。農水産加工品・畜産品・乳製品等が対象
- 健康食品・サプリメントは品目・成分によって規制が変わるため、専門家への確認を推奨
6. 物流設計と販売スキルの両輪が越境ECを成功させる
物流の仕組みを整えることは「スタートライン」に過ぎない。
倉庫を確保し、通関体制を整え、プラットフォームに出店しても、商品が売れなければ保管コストと固定費が膨らむだけだ。中国の越境EC市場で継続的に売上を立てるためには、配信スキル・プラットフォーム知識・台本設計・コメント対応といったライブコマースの実務能力が、物流インフラと同等に重要になる。
中国ライブコマース×越境ECの統合戦略でも指摘しているように、KOL外部委託に頼り続けると歩合コストが蓄積し、物流コストと合わせて利益率を圧迫し続ける。自社の担当者がライブ配信スキルを持ち、保税倉庫の在庫を活用した配信を自社で回せるようになることが、中長期の収益改善の本命だ。
この担当者育成を国の助成金でカバーできる制度が、事業展開等リスキリング支援コースだ。
ライブコマース研修と助成金活用の完全ガイドでは、研修受講から助成金申請・受給までの全プロセスを解説している。2026年改正の主なポイントは以下の通りだ。
- 疎明書の義務化:受講料の価格根拠を示す疎明書の提出が必須となった
- eラーニング型は賃金助成の対象外:集合研修(OFF-JT)型で申請する必要がある
- 助成率:中小企業は経費の最大75%(審査制。必ずしも採択・支給が保証されるものではありません)
FAQ
Q. 小ロット(月50件以下)でも保税倉庫を使う意味がありますか?
A. 月50件以下の場合、保管料・入庫費・固定費がコストに占める割合が高くなるため、直送(国際宅配便)のほうが総コストは安いケースが多い。保税倉庫モデルは月200件以上の安定出荷が見込める段階で検討するのが現実的だ。
Q. Tmall Globalと抖音電商では物流要件が違いますか?
A. 異なる。Tmall Global出店の仕組みと物流設計で解説しているが、Tmall Globalは保税倉庫または海外直送(9610申告)の両方に対応している。抖音電商(TikTok Shop中国版)は保税倉庫在庫との連携を推奨しており、ライブ中の即日発送演出に適した倉庫連携が求められる。
Q. 食品を中国向けに越境EC販売する際の物流上の注意点は?
A. 食品は温度管理・衛生証明・GACC(中国税関)の輸出者・生産企業登録が必要なカテゴリが多い。また、賞味期限が中国の輸入基準(残存期間)を満たしているか確認が必要だ。小ロットで始める場合も、専門フォワーダーか通関士に事前相談することを推奨する。
Q. 返品された場合、中国の保税区から日本に商品を戻せますか?
A. 制度上は返品再輸入が可能だが、実務上はコスト(往復送料・通関費用)が商品価値を超えることが多い。返品率が高い商品カテゴリ(アパレル等)では、現地廃棄または寄付・処分を前提としたコスト設計が必要になる場合がある。
まとめ
中国向け国際物流は、「とりあえず国際宅配便で送る」からスタートできるが、越境EC事業として規模を追う段階では保税倉庫モデルへの移行が競争力の鍵になる。
物流インフラの整備と、ライブコマースによる売上獲得スキルは両輪だ。どちらか一方が欠けても、越境EC事業は利益を出し続けられない。物流設計を固めながら、並行して販売人材の育成も進めることが、費用対効果の高いアプローチだ。
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