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東方甄選に学ぶ「知識型ライブコマース」:高付加価値商品を売る教育×販売モデルと日本企業への応用

読了時間:約10CNavi編集部
東方甄選に学ぶ「知識型ライブコマース」:高付加価値商品を売る教育×販売モデルと日本企業への応用

東方甄選に学ぶ「知識型ライブコマース」:高付加価値商品を売る教育×販売モデルと日本企業への応用

POINT|この記事の結論

  • 東方甄選(Dongfang Zhenxuan)は中国の教育企業・新東方が立ち上げたライブコマースチャンネルで、「商品を売りながら知識を伝える」スタイルで急成長した
  • 従来のKOL型「価格煽り・限定演出」に依存しない知識×ストーリー型の配信で、高付加価値商品の成約率を引き上げることに成功した
  • 日本企業にとって最も再現性が高い点は「商品の背景を語れるライバーの育成」「製品ストーリーの台本化」「配信後アーカイブによるコンテンツ資産化」の3つ
  • この手法は中国ライブコマース研修を通じて体系的に習得できる。助成金(事業展開等リスキリング支援コース)を活用した実質負担25〜40%前後での研修導入も可能(審査制・支給保証なし)
  • 食品・コスメ・伝統工芸・農産品など「語れる商品」を持つ日本ブランドとの相性が特に高い

東方甄選とは何か――中国ライブコマースに「知識価値」をもたらしたチャンネル

東方甄選(Dongfang Zhenxuan、東方精選)は、中国最大の学習塾チェーン「新東方(New Oriental)」が2021年末から2022年にかけて立ち上げたライブコマースチャンネルです。

新東方は学校教育の規制強化(双减政策)によって主力事業が大打撃を受け、事業転換の一環としてライブコマースに参入しました。当初は鳴かず飛ばずの状態でしたが、英語講師出身のホスト「董宇輝(Dong Yuhui)」が登場したことで状況が一変します。

董宇輝は農産品や食品を販売しながら、英語の詩を朗読し、農業の哲学や食文化の背景を語り、視聴者に「学び」を提供しました。単に「安い」「残りわずか」と煽るのではなく、商品に付随する文化・歴史・物語を丁寧に語りかけるスタイルです。

この配信スタイルは瞬く間に話題となり、抖音(TikTok中国版)上のフォロワー数が急増。高付加価値の農産品や食材が定価以上の値段でも次々と売れる現象が起き、中国メディアで「知識型ライブコマース」「文化型ライブコマース」として広く報道されました。

このモデルが示した最大のインパクトは、「価格競争をしなくても売れる」 という証明でした。


なぜ知識型ライブコマースで高単価商品が売れるのか

従来の中国ライブコマースで用いられてきた主な成約促進手法は、次のようなものでした。

  • 坑位費+歩合報酬: KOLへの出演料と成約率に応じたフィー構造
  • 限定感の演出: 「残り100個」「この価格は今夜だけ」のカウントダウン
  • 価格の可視化: 「通常価格○○円が今夜は○○円」の強調
  • コメント煽り: 「欲しい人はコメントで『1』を」

これらは短期的な成約には効果的ですが、副作用もあります。ブランド価値の毀損(常に値引きしているイメージ)、価格に敏感なユーザー層への偏り、リピート率の低さ——これらは多くの日本ブランドが中国ライブコマースで直面してきた課題です。

知識型ライブコマースは、この構造に対するオルタナティブです。成約心理の根拠が「安いから」でなく「理解できたから」「このブランドを信頼したから」に変わります。これを可能にする要素を分解すると、次の4つに集約されます。

① 商品の「物語」を深く語る

商品そのものの価値だけでなく、その背景にある文化・製法・産地・開発者のこだわりを語ります。

例えば東方甄選の農産品の販売では、「この大豆がどの土地でどう育てられたか」「農家がどんな思いで作っているか」という文脈を語り、単なる食品ではなく「その土地の文化を手元に届ける」体験として販売しました。日本企業に置き換えれば、老舗の醤油メーカーが「仕込み期間3年・杉桶発酵の意味」を語りながら販売する、といったイメージです。

② ホストの専門性・人格が信頼に転化する

視聴者は商品だけでなく「このホストが薦めるから買う」という人格信頼型の購買行動をとります。東方甄選の講師たちは元教師・元通訳者・元アナウンサーなど、それぞれの専門領域を持ち、その知識が配信の説得力を高めています。

これは単にトークが上手いということではなく、「なぜこの商品がいいのかを深く語れる知識」を持っているということです。特定分野の専門家が自身の知見と商品を結びつけることで、他のKOLには出せない独自の価値が生まれます。

③ 感情的価値の付与(モノではなく体験・記憶を売る)

「この食品を買う」のではなく「田舎の祖父の畑の味を手元に届ける」という感情的価値を言語化します。これは商品コピーではなく、配信中の語りによって生まれます。視聴者が「このホストの話を聞いていると心が豊かになる」と感じれば、商品は感情の延長として購入されます。

④ ファンコミュニティの形成(継続的関係性)

知識型の配信は「また見たい」「次の商品も気になる」というリピート視聴の動機を生み出します。東方甄選のファンの中には「何を売っているかより、誰が語っているかを見にきている」という層が存在します。これが私域流量(プライベートドメイン)の蓄積につながり、単発のGMVではなく長期的なブランド価値の構築に貢献します。


知識型モデルの「限界」も理解する

この手法が万能でないことも明示しておきます。

向いていない商品・企業タイプ:

  • 価格訴求が中心の日用品・コモディティ(競合と差別化できる「語り」が作りにくい)
  • ホストに商品知識を深く学ばせる時間・コストをかけられない体制
  • 短期GMVの最大化を最優先するキャンペーン

成功の前提条件:

  • 商品に「語れる背景」が存在すること(産地・製法・開発ストーリー・資格・受賞等)
  • ホストが継続的に成長できる研修・フィードバック体制
  • 短期売上よりも「ブランド認知とファン形成」を中期KPIに置けること

東方甄選自身も、董宇輝が独立した際に一時的にチャンネルの勢いが落ちたことがありました。人格依存型の脆弱性は知識型モデルにも存在します。日本企業がこのモデルを取り入れる際は、特定の「顔」への依存を避け、チーム・システムとして知識型配信を構築することが重要です。


日本企業が実践できる3つの「知識型配信」手法

東方甄選のモデルから日本のライブコマース現場に直接応用できる要素を3つに絞り込みます。

手法1:「商品背景ドキュメント」の作成と台本化

販売する商品ごとに、次の情報をまとめた「商品背景ドキュメント」を作成します。

  • 産地・産地の文化: どの地域・農家・工場で作られているか
  • 製法・原料のこだわり: 他社との差別化ポイント(例:天日塩・無農薬・低温発酵)
  • 開発ストーリー: 誰がなぜ作ったか、課題解決の背景
  • 使い方・活用シーン: 生活の中でどう価値を生むか
  • データ・認証: 受賞歴・資格・成分分析・試験結果

このドキュメントをベースに配信台本を構成します。中国式の「限定×煽り」台本ではなく、「背景→価値→使い方→購入案内」の流れで構成することで、知識型の語りを再現できます。

関連ノウハウ:中国型ライブコマース台本の構成と応用

手法2:専門知識を持つホストの育成と研修設計

東方甄選が成功した最大の理由のひとつは、「商品知識を深く語れる人材が配信した」点です。日本企業でこれを実現するには、ライバーへの商品研修が不可欠です。

具体的には:

  • 製造現場・産地への訪問研修(現地を知ることで話に具体性が増す)
  • 商品担当者・開発者との1on1ヒアリングセッション
  • 競合商品との比較試用(なぜ自社商品が優れているかを体感する)
  • 語り練習のロールプレイ(知識を持っても「伝える技術」は別途訓練が必要)

この人材育成プロセスそのものを、事業展開等リスキリング支援コースの対象研修として設計することで、助成金の活用が可能になる場合があります(研修内容・対象者の要件を事前に所轄労働局に確認してください。助成は審査制であり、採択・支給は保証されません)。

手法3:配信アーカイブの二次コンテンツ化

東方甄選は配信の名場面をショート動画として切り出し、TikTok上で二次拡散させています。これにより「ライブ視聴者以外」へのリーチが拡大し、アーカイブがそのまま購買動機となります。

日本企業がこれを取り入れるには:

  1. 配信中の「語りの山場」シーン(商品の背景を深く話した部分)を特定
  2. 1〜3分のショート動画として切り出し・字幕挿入
  3. TikTok・Instagram Reels・YouTube Shortsで展開
  4. ショート動画末尾に次回配信の告知・予約リンクを挿入

ライブの1本の配信から5〜10本のショート動画が生まれる設計が理想的です。これは一見手間に見えますが、チームの役割分担(配信担当・編集担当・SNS担当)を整備することで自動化できます。ライブコマースの運用チーム体制づくりで具体的な体制設計を解説しています。


日本のどんな商品がこのモデルと相性がよいか

東方甄選のモデルが最も効果を発揮するのは、「語れる背景がある商品」です。以下のカテゴリーは日本市場において特に相性が高いと考えられます。

カテゴリー 語れる要素の例
農産品・食品 産地の気候・農家の哲学・在来種・製法・旬
日本酒・醤油・味噌等の発酵食品 蔵の歴史・菌の種類・熟成期間・杜氏の技
伝統工芸品 産地の文化・職人の経験年数・素材の調達
コスメ・スキンケア 原料の産地・成分の機能・開発の動機・臨床データ
アウトドア・スポーツ用品 設計の意図・素材の機能・開発者のフィールド体験
ペット用品・ベビー用品 安全基準・開発者の動機・素材の無害性証明

これらの商品カテゴリーは、価格ではなく「理解」と「信頼」で購買決定が行われやすく、知識型ライブコマースとの親和性が高いと言えます。

一方で、薬機法の規制には注意が必要です。化粧品・サプリメントのライブコマースにおいて、効能・効果を断定的に語ることは薬機法違反のリスクがあります。「語れる背景」を設計する際は、効能の断定表現を避け、成分・製法・原料の客観的事実に基づいた語り口を採用してください。


CNavi研修でこの手法をどう習得するか

CNavi(シーナビ)の研修プログラムでは、東方甄選に代表される中国知識型ライブコマースの成功事例を教材として活用し、以下の実践スキルを体系的に学ぶことができます。

習得できる主なスキル:

  • 中国ライブコマースの主要成約心理と台本構成の理論
  • 商品の「語れる背景」を抽出・構造化するドキュメント作成手法
  • ホストのトーキングポイント設計とロールプレイ演習
  • 配信分析→コンテンツ改善のPDCAサイクル
  • TikTok Shop・抖音EC向けの商品ストーリー設計

また、中国式ライブコマース研修が必要な理由でも解説しているとおり、中国の実践知識は独学で再現することが難しく、専門家から体系的に学ぶことで習得速度が大きく変わります。

研修は事業展開等リスキリング支援コースの対象となる可能性があり、受講料の一部について助成金が利用できる場合があります。助成額は最大で受講料の75%相当(生産性要件を満たした場合)とされていますが、実際の支給は審査・採択によるものであり、事前に確定するものではありません。「実質負担25〜40%前後」はあくまで助成が承認された場合の試算です。

助成金の申請・計算の詳細はピラーガイドをご確認ください。


よくある質問

Q. 東方甄選のような知識型配信は、日本の視聴者にも通用しますか? A. 日本のライブコマース市場でも、単純な価格訴求より「この人が薦めるから信頼できる」という購買動機の割合が高まっています。特に40代以上のターゲット層や、食品・伝統工芸・コスメなどの商品カテゴリーでは有効性が報告されています。一方で日本の視聴者は「過度な煽り」に対してむしろ警戒心を持つ傾向があり、知識型のアプローチが合いやすいとも言えます。

Q. ホストが「語れる知識」を持っていない場合、どう対応しますか? A. 研修と準備で補えます。重要なのは「最初から全部知っている」ことではなく、「商品担当者から学び、視聴者に伝えられるレベルに落とし込む力」です。CNavi研修では、商品知識のインプットから視聴者への伝え方まで、ライバーが段階的に習得できるカリキュラムを提供しています。

Q. 中国ライブコマースの手法をそのまま日本市場に転用できますか? A. 完全な転用は困難です。日本と中国では視聴者の購買心理・プラットフォーム特性・景表法などの法規制が異なります。CNavi研修では中国の手法を「原理として理解し」「日本市場に合わせて応用する」ための翻訳作業を重視しています。中国ライブコマース日本企業の応用まとめも参考にしてください。

Q. 助成金は必ず使えますか? A. 必ず使えるわけではありません。助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は審査制であり、申請内容の審査を経て採択・不採択が決定されます。採択保証・支給保証はいかなる機関も行えません。「国が認めた研修」という表現も正確ではなく、あくまで「対象となりうる研修の要件を満たしているか」を労働局が審査するプロセスです。


まとめ:知識型ライブコマースは「価格競争からの脱出」への道筋

東方甄選が示したのは、ライブコマースにおいて価値を「語れる」ことが競争優位になるという事実です。

中国のEC市場が飽和し価格競争が激化するなかで、知識型・文化型の配信スタイルが新たな差別化軸として機能しました。この構造は、日本企業がライブコマースを始める際にも示唆に富んでいます。

「安くするしか売り方がわからない」状態から抜け出すためには、商品の背景を語れる人材の育成その語りを支える知識インプットの仕組み化が不可欠です。

CNavi研修では、中国ライブコマースの最前線事例をもとに、日本企業の担当者が実践できる形に落とし込んだカリキュラムを提供しています。まずは無料の個別相談で、自社の商品・体制に合った導入プランをご確認ください。


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