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中国越境ECとは|仕組み・主要プラットフォーム・日本企業が参入する前に知っておくべき全知識
中国越境ECとは|仕組み・主要プラットフォーム・日本企業が参入する前に知っておくべき全知識
POINT|この記事の結論
- 中国向け「越境EC」とは、日本の在庫を海外から直接中国消費者に販売する形態。一般貿易と異なり、中国国内の法人登記・食品衛生許可が不要なため、中小企業でも参入しやすい
- 主要プラットフォームはTmall Global・JD Worldwide・抖音電商(越境)の3本柱。それぞれ出店コスト・審査基準・集客特性が大きく異なる
- 関税は「行郵税(個人郵送税)」ではなく跨境電商综合税が適用される。50人民元以下は免税、年間累計上限あり
- ライブコマースと越境ECを組み合わせた「越境ライブ販売」が急成長中。KOLが日本から・または中国国内から日本製品を紹介するモデルが主流になっている
- 越境EC参入後、自社配信能力がないと代行依存で利益率が圧迫される。ライブコマース研修(助成金活用可)で内製化するのが費用対効果の高い選択肢
1. 中国越境ECとは何か——一般貿易との根本的な違い
「中国で商品を売りたい」と考えたとき、大きく分けて2つのルートがある。一般貿易と越境ECだ。
一般貿易は、商品を正規輸入品として中国国内に通関させ、中国国内の流通網に乗せる方法。中国国内法人の設立または現地パートナーの確保、食品衛生許可(食品の場合)、商品のラベル中国語対応など、参入ハードルが高い。
一方、**越境EC(跨境电商)**は、商品を日本の倉庫または保税区倉庫に置いたまま、中国消費者の注文に応じて個別に発送する方法だ。消費者から見れば「海外から直接買う」という形になる。
主な違いをまとめると以下のとおりだ。
| 項目 | 一般貿易 | 越境EC |
|---|---|---|
| 中国法人 | 原則必要 | 不要 |
| 商品規制・許可 | 中国基準に従う(食品衛生許可等) | 海外基準のまま販売可(ただし越境ECポジティブリスト内) |
| 関税・税制 | 通常関税+増値税+消費税 | 跨境電商综合税(優遇税率) |
| 在庫所在 | 中国国内 | 海外または保税区 |
| 参入コスト | 高 | 低〜中 |
越境ECが日本企業に注目される最大の理由は、「中国国内に拠点を持たなくても中国消費者に直接リーチできる」点にある。
2. 越境ECの税制——跨境電商综合税とは
従来、個人が海外から商品を購入した場合「行郵税(个人邮寄税)」が適用されていたが、2016年に跨境電商税制改革が実施され、越境ECプラットフォームを通じた購入には跨境電商综合税が適用されるようになった。
主な制度ポイントは以下のとおり。
- 1回の購入上限:5,000人民元(約10万円)
- 年間累計上限:26,000人民元(約52万円)
- 50人民元以下:関税免除(増値税・消費税は法定税率の70%を課税)
- 上限超過分:通常の一般貿易関税が適用
化粧品・サプリメントなど消費税がかかるカテゴリーは、综合税率が15〜30%になることもある。価格設定の際は必ず品目別の税率を確認すること。
また、越境ECで販売できる商品は跨境EC商品ポジティブリストに収載されたものに限られる。2024年改定版リストでは生鮮食品の一部や特定の医療機器が追加されており、定期的な確認が必要だ。
3. 主要プラットフォーム比較——Tmall Global・JD Worldwide・抖音電商
3-1. Tmall Global(天猫国際)
アリババグループが運営する越境EC専門プラットフォーム。日本では「天猫国際」の名で知られる。
特徴
- 月間アクティブユーザー数が最大規模(アリペイ・タオバオとの連携)
- ブランドとしての棚出しが可能。自社ストアの構築に向く
- 審査が厳格。年間売上や브랜드の知名度が問われることが多い
- 出店保証金+年次サービス費用が発生(カテゴリーにより異なる)
向いている企業:ある程度ブランド認知がある、またはブランド構築に投資できる中堅〜大企業。
3-2. JD Worldwide(京東全球購)
京東(JD.com)の越境EC部門。物流の自社管理が強みで、品質保証と配送スピードを訴求する。
特徴
- 「正品(正規品)」訴求が強く、偽物を嫌う富裕層・品質重視層が集まりやすい
- カテゴリーはデジタル家電・健康食品・食品が強い
- 配送は京東物流(自社)が担うため、顧客体験が安定している
向いている企業:品質をブランドの核心に置くメーカー。特に食品・サプリ・母婴(母子)カテゴリー。
3-3. 抖音電商(越境コマース)
TikTokの中国版・抖音における越境EC機能。「短動画×ライブ×商品購入」が一体化した次世代型販売チャネル。
特徴
- アルゴリズムによる「発見」が起きやすい。広告投下なしでも爆発的な拡散事例がある
- KOL・KOCとの連携ライブ配信が主な売上源
- 商品登録・決済・物流が抖音エコシステム内で完結する
- 越境EC対応は2023年以降拡充が進んでいるが、日本企業向けの出店ルートは現状パートナー経由が主流
抖音電商については「抖音電商とは|日本企業向け解説」も参照してほしい。
3-4. その他の選択肢
- Kaola(考拉海購):ネットイース運営、品質保証型プラットフォーム。母婴・コスメに強み
- 小紅書(RED)ショッピング:UGC・口コミ主体。ファッション・コスメ・ライフスタイル系に強い
- WeChat ミニプログラム(小程序):既存の中国パートナー・KOCの私域流量を活かした自社EC展開に向く
4. 越境EC×ライブコマースの掛け合わせが急成長している理由
単純に商品を棚に並べる「モール出品」型の越境ECは、競合が増えるにつれPPC広告費が高騰し、利益率が悪化している。そこで注目を集めているのがライブコマースとの組み合わせだ。
4-1. 日本現地からの越境ライブ配信
KOLまたは企業の自社配信者が「日本からリアルタイムで商品を紹介」するスタイルは、中国消費者の間で「本物感」「安心感」として高く評価される。製造工場の見学・日本の産地紹介・品質検証シーンが人気コンテンツになりやすい。
日本からの越境ライブ配信の具体的な方法については「中国向けライブ配信を日本から行う方法」でも詳述している。
4-2. 中国国内KOLを使ったライブ紹介
中国国内のKOLが保税倉庫から日本製品を紹介し、注文後に倉庫から発送する。消費者は即日〜翌日で商品を受け取れるため、コンバージョン率が高い。ただしKOLへの報酬(坑位費+歩合)の構造が複雑で、費用対効果の読み違いが起きやすい点に注意が必要だ。
4-3. 保税倉庫活用で配送スピードを担保
中国の保税区(杭州・鄭州・上海等)にある保税倉庫に事前に在庫を積んでおくと、注文発生後のリードタイムが大幅に短縮できる。ライブ配信中の衝動買いは「今すぐ欲しい」心理が強いため、配送スピードはコンバージョンに直結する。保税倉庫の活用については「中国保税倉庫と越境ライブの在庫管理」も参考にされたい。
5. 日本企業が越境ECを始める際の4ステップ
ステップ1:商品適格性の確認
まずは自社商品が越境ECポジティブリストに収載されているかを確認する。食品・サプリ・化粧品・ベビー用品などは多くが対象だが、医薬品・特定の電気製品はリスト外のことがある。
ステップ2:プラットフォーム選定
前述の3プラットフォームの審査基準・コスト・集客特性を自社のリソースと照らし合わせて選定する。初期コストが限られる場合は、まず抖音KOL連携→Tmall Globalの順で参入するケースが多い。
ステップ3:物流パートナーの確保
越境EC専門の物流会社(旅日清貿・鑫豪国際物流等)または保税倉庫オペレーターと契約する。配送コスト・リードタイム・破損率・返品対応の4点を必ず比較すること。
ステップ4:ライブコマース連携の内製化検討
KOLへの外注だけでは利益率が限界を迎える。自社でライブ配信を実施するための人材育成が中長期的な競争力の源泉になる。中国式ライブコマースの全体像で紹介しているように、中国トップKOLの手法を体系化した研修が存在し、助成金を活用して研修費の一部を補助できる場合がある(審査制・支給保証なし)。
6. よくある落とし穴——失敗しないための注意点
落とし穴①:税制変更への対応遅れ
跨境EC税制は頻繁に改定される。関税率の変化が商品の価格競争力に直撃するため、制度変更情報の継続的なモニタリングが必要だ。
落とし穴②:返品率の高さを過小評価
ライブコマース経由の購入は衝動買いが多く、返品率が高い傾向がある。プラットフォームによっては返品率が一定水準を超えるとペナルティが課される。返品ポリシーの設計と保税倉庫での返品処理フローを事前に構築すること。
落とし穴③:KOL費用のブラックボックス化
坑位費(出演料)+GMV歩合の組み合わせ報酬体系は、事前の費用見積もりが難しい。特にGMVを水増しして歩合を実質的に上げるケースが報告されている。契約書に「実際の決済完了数ベースの歩合」を明記することを徹底してほしい。
落とし穴④:ライブ配信を代行だけに依存する
代行KOLへの依存が続くと、ブランドのノウハウが外部に蓄積され、乗り換えコストが上がる。越境ECが軌道に乗ったタイミングで自社配信者の育成を並行して進めることを推奨する。
FAQ:中国越境ECについてよくある質問
Q. 中国語サイトを作る必要がありますか? A. Tmall GlobalやJD WorldwideはプラットフォームのUIが中国語であるため、商品説明の中国語化は必須だ。ただしゼロから自社サイトを構築する必要はない。
Q. 個人事業主・スタートアップでも参入できますか? A. Tmall Globalは法人かつ年商基準あり(カテゴリーにより異なる)。初期は抖音KOL連携や、ダイゴウ(代購)プラットフォームを活用した小ロット検証が現実的な入口になる。
Q. ポジティブリストに載っていない商品はどうすればよいですか? A. 一般貿易ルートでの輸出・中国法人経由の販売を検討する。または類似カテゴリーでの試験出品後、データを蓄積してプラットフォームに商品カテゴリー拡充を申請する方法もある。
Q. ライブコマースを自社でやる場合、どこから始めればよいですか? A. まず中国式ライブコマースの配信技術と台本構成を習得することが優先される。事業展開等リスキリング支援コースを活用した研修は、受講料の**最大75%**が助成対象になり得る(審査制・後払い・支給保証なし)。詳細はライブコマース研修と助成金の法人ガイドを確認してほしい。
まとめ:中国越境ECは「仕組み理解」から始まる
中国向け越境ECは、一般貿易に比べて参入障壁が低い一方、税制・プラットフォームルール・物流・ライブコマース連携と、押さえるべき知識の範囲は広い。とくに「ライブコマース×越境EC」の組み合わせは、参入後の売上拡大に直結する重要な施策であり、自社配信能力の有無が競争優位を左右する。
越境ECの参入検討を進めながら、並行してライブコマース配信スキルの内製化を進めることが、持続的な成長への最短ルートだ。
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